※観賞用※

絵:玖日



 にゃんにゃん共和国南国の島国、鍋の国。この国に暮らしている猫士は国民達の大事な友であり、お隣さん。そして和みであった。


 猫士は一見すると普通の猫であり、毛色に統一性はないため、いわゆる雑種に見える容姿をしている。しかし、厳密には猫ではない種族だが、猫を祖先とする種族であるため、容姿はほぼ猫である。大きさは最大でも1m程度のサイズであり、猫と共通点もあれば猫とは全く違う特徴も持っていた。

 まず、猫士は二足歩行ができる。そして猫と同じにくきゅうでありながらもその手で箸を持ったり、ハサミで紙をチョキチョキ切ったりする事ができる。また四足歩行も自由にする事ができ、個体によっては四足歩行を好む者、二足歩行を好む者など個人差がある。

 性格も人のように多種多様。それこそ趣味がお買い物に料理となれば手に物を持つ為に常に二足歩行という者もいれば、四足歩行でノッシノッシお散歩大好きといった者もいる。
 また、猫士は人の言葉を理解する知性がある。人の言葉を話すには訓練が必要な為、猫士によっては喋ることができたり、反対に微妙に舌足らずなどの理由によりできない者もいる。お買い物をするならば人との会話は必須ではあるが、ただお散歩するだけならば人の言葉は特に必要ではない。生活スタイルによって習得スキルが違うという事である。このように、料理や裁縫、スポーツに読書など猫士によって趣味、特技、嗜好は変わってくる為、生活模様は人のように複雑である。なお、猫士同士の会話には猫語を使用しており、その為、互いの意思疎通は容易に行える。



 そんな猫士達は猫の様なかわいさを持っている。それもそのはず、見た目はもふもふの猫なのである。その為か、鍋の国で時々見られる猫士の姿に鍋の国国民はメロキュン。猫士の姿を見ると今日もニコニコ和やかに過ごせる、猫士は見ているだけで癒されるといった大多数の意見があり、色々な食材を食する鍋の民においてはあの子達は観賞用であり、また隣人であり、共に国を支える大切な人類の友であるという認識があり、食用として狙われたり扱われるようなことはない。そう、愛でるのが良いのである。
 国民の間には猫士ファンクラブなるものが存在しているぐらいである。また、会員の中には猫士の愛らしい猫耳猫尻尾に憧れる国民もおり、猫耳カチューシャや付け尻尾、肉球グローブなどを身に付けて、いわゆる猫妖精スタイルを楽しむ者もいる。



 鍋の国の猫士の公務は多岐に渡る。海兵隊、パイロット+コパイロット、施設勤務では警官、医師など……。そんな様々なお仕事をスムーズにこなす為に各猫士には専用の装備アイテムが支給されている。服のサイズは人と同じ物では大きすぎる。それと同じ様に各種装備においても猫士が使うのに向いている大きさのモノを用意しているのだ。医師の医療道具や海兵隊の銃、警官の警棒など、様々なアイテムが猫士サイズ、また猫士の手にジャストフィットするように特注で用意されており、職場で使用できるように保管されている。こういったアイテムは鍋の職人さんが一つ一つオーダーメイドで作ったものであり、猫士達がスムーズに公務を行う事ができるようにと随所に工夫が込められている。

 そんな専用アイテムは服や手持ち道具だけでなく意外な所でも用意されている。それはI=Dや装甲兵員輸送車の収納ハンガーにある。それは猫士用シートである。
 鍋の国が作成しているI=Dは共和国共通I=Dな為、人や猫士も想定した上で開発が行われており、ある程度の身長差といったものはカバーできるように設定が行われている。しかし、人と同じく猫士にも身長、体重には個人差がある。公務でI=Dや装甲兵員輸送車に乗る機会が多い猫士達により安全に、より快適に乗ってもらう為に調整した猫士用のシートが猫士ごとに用意されている。また、報告書を作る際に使用するキーボードなども猫士の手(にくきゅう)でも使いやすいようにサイズを調整した物が用意されている。
 猫士達が行う公務は国民や、国の重要なライフラインを守る仕事が多い。だからこそ、日常の不便さでストレスや疲れがでないように、より快適に公務が行えるように用意されている。

警官や医師として警察署や病院に配置される猫士達においては、人と共に立派に仕事を務めている姿が一般国民の目に触れやすい。また、猫士ということを最大限に活かした仕事をこなしたり、そんな猫士達を見ている国民は国のライフライン、国民の生活の基板を人と共に守っている彼ら彼女らに対してメロキュンだけではなく、感謝の気持ちを持っている者も多い。猫士用装備を用意した政庁や職人達はそんな猫士達への感謝と敬意を込めて、今日も専用装備のメンテナンス、管理を行うのであった。
猫士達の公務は様々な勤務がある。警官、医師、パイロット、海兵隊。編成勤務もあれば、国有施設(警察署や市民病院)への勤務など活動範囲は広い。そんなそれぞれの部署の装備品や支給品が個別各種用意されているという事、またいつでも使用できるようにメンテナンス保持されているという事から自分達への信頼の気持ちを感じている。


 そんな猫士達にも共通の嗜好がある。それは鍋料理である。鍋の国だからゆえか、鍋の国だから当たり前なのか、猫士達の食事においても主食は鍋である。鍋といえば猫が食べてはいけないネギなどが食材としてあるが、猫士は猫ではなく、猫士である。人と生活様式が近い種族だからなのか、ネギを始めとする猫が食べられない食材も猫士は摂取する事が可能であり、また猫士によっては自分で料理をして食べている者もいる。(もちろん本人の性格もあるので料理が苦手な子もいる)。また彼らも食べ物の大規模科学研究結果を参考にしており、猫士自身も周囲の人も、猫士の食べる物には気をつけながら食生活を送っている。


 また彼らは猫を祖先にもち、猫に近い種族だからなのか身体は柔軟にできており、鍋の国特殊部隊のような飛び蹴り、でんぐり返しや高所から飛び降りたときの衝撃吸収、聴覚が人より優れており、バランス感覚に秀でているなどの猫の特徴を備えている。
 反対に猫の弱点も一部持っているのか、猫舌である。その為、鍋の国主流の熱い鍋は食べられない。冷ました上で食べるか、お椀に入れて冷めるまで待つかである。最近では料理のできる猫士は自分が食べられる適温の鍋を作るコツを覚えたらしく、そのレシピ本を出した者もいる。このレシピ本は鍋の国国民の中に少数とはいえ存在する猫舌持ちの人々の中で称賛の拍手を持って迎えられ、ちょっとしたブームとなっている。



    


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